モモセヒロコ

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なきながら咲いている

About the work

             
冬のある日近くの温泉で、昔よく会っていた人に偶然会った。
はじめ声をかけられた時、彼女だと分からなかった。
ものすごく痩せていたのだ。
お互い裸で照れくさかったが久しぶりに色々と話す。
病気で療養していることをうわさで聞いていたので、
体のことを聞くと、もう体内の腫瘍は手術ではとれないので薬で散らすしかないという。
すでに遺影の写真を共通の知人に撮ってもらったと聞いた時、正直耳を疑った。
きれいなうちに撮っておこうと思って、と、彼女は言う。

だけど、そうと分かったらそれに向かって進んでいくしかないし、

冷静に進んで行く姿勢がとても立派だと思った。

 

ある、雨上がりの早朝ハス園に行くと、ぷくぷく、ぷくぷくと音がする。
それは、大きな ハスの葉のつけ根の水たまりに、茎からすいあげた空気が漏れ出る音だった。
生きているんだ、と、思った。
ハスもきれいに咲き乱れていて、なんだかお釈迦様のいる世界だと思った。

 

夏のある日スキー場に行った。百合が沢山植えられていた。
きれいに等間隔に植えられた百合の見頃はもう過ぎていた。
だけど、ものすごく美しいと思った。
その場で一生を終える百合の姿と彼女の姿が重なった。
花びらの表面にできた醜い斑点は二度となくなることはない。
そして水分がなくなってゆき消滅する。

 

彼女がなくなってから見に行ったダリア。

雨の日のダリアはなんだか泣いているようだった。

彼女のことを思い出しながらこの写真を撮った。

私は彼女のことを一生忘れない。

 

植物達はその季節がきたら咲き散っていく。
毎日どんな日もその場にずっといて、やってくる生物達と交流し、

光を浴び、雨水を受け、その場で散る。
私はただそこに存在している植物や生物に出会うことでパワーをもらった。 



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