モモセヒロコ

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世界

About the work


旅の途中にフラリと立ち寄ったこの場所。
広い空間を黄色い鳥がものすごい勢いで自由に飛ぶ、

非現実的な光景を見て鳥肌がたったあの時の感覚を今でも覚えている。
一年後再びその時の感覚を呼び起こしたくてその場所に行った。
私が二度目の来客者なのを知ってか、肩にぴょんと乗ってくる鳥がいた。

鳥を見るのは楽しいけれど触ったりするのが苦手な私は思わずギャーっとさけんでしまった。
この空間の真ん中には大きな池があって、行った時丁度静かにすいれんが花開こうとしていた。
大きな水に浮かぶ葉に乗るようにして水の上を歩く鳥もいるのに

黄色い鳥達は水の上を飛ぶだけでその様に歩くことは決してなかった。
この空間の様々な鳥には、鳥ごとに遺伝子に組み込まれているそれぞれの生活様式があるようなのだ。
鳥達を眺めていた時は気づかなかったが、

一羽一羽をよく見ていると少しづつ違い、体は小さいけれど存在感があった。
この空間は、一つの世界、人間の社会のようなものかもしれないと思った。
食べ物、室温等が人によって管理されていて、床に糞をしたとしてもす ぐ人がきれいに掃除してくれる、

鳥にとってとても快適な事だけど、少し脱毛している鳥もいて、

組織の中で生活していきさらに人間とかかわりを持っていく事で

なんら かのストレスをうけているのかもしれないと思った。

餌を一心に食べている鳥たちを眺めていたら、頭部がまるはげになっている鳥が他の鳥達にまざって一生懸命食べている。

この場所で一生を終えるのだ。
ずっと飛ぶ鳥の写真を撮っていて、だんだんシャッター音が射撃音に聞こえてくるようになった。

はじめ、5、6羽だった鳥も30羽くらいの群れになっていって、

彼らの生命のエネルギーを感じるのと同時に恐怖も感じ、

とても太刀打ち出来ないと思い、この場所を後にした。

 


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