Picturesque
About the work
祖母が亡くなった。中学の頃に癌で死んだ私の母の母親である。
しばらく祖母には会っていなかった。
ある日、祖母入院という葉書が母の兄から届き、お見舞いに行き、退院した後も祖母の家に時々遊びに行くようになった。
一緒にブルーベリーを積んだり、いちごを積んだりした。
祖母の家に行く時は必ずカメラを持って行った。
けれど、彼女は写真を撮られる事をとにかく嫌った。
あまり目は見えないはずだった。
でも、カメラを向けるとものすごく怒るのだ。
それで、あまり写真を撮らなくなった。
そのかわり色々な話をした。
そのころ友人が次々と妊娠した。
私は祖母から私が生まれた時のことを聞いた。
お産は母親が重いと、子供も重いという話を聞いて、どうしても聞いておきたかったのだ。
私には足などに軽い障害があるのだが、母親はものすごく体調が悪くて大変だったといっていた。
もしかしたら、生まれなかった可能性もあったかもしれない。
ある日、病気が悪いこともあって長男が大阪から帰ってきた。
彼は我が強くて、周りの誰もがぶつかった。
私も、何で結婚しないのか、子孫を絶やさないでくれ、という話を延々とされた。
行けば祖母は息子が帰ってきてくれたことで、とても幸せそうだった。
でも、彼は必ず何かに対して攻撃するので、この家の出入りをやめた。
亡くなった時、小さな小さなお葬式をした。もう、カメラを向けても怒られることはない。
でも、祖母と交わした無言の約束で、撮らなかった。
すべてが終わった時、なんとなくぽかんと心に穴が空き、そんな時に北と南に旅にでた。
祖母が亡くなった後も、また違う友人が妊娠した。
彼女達のお腹が大きな様子は、腹水がたまって大きなお腹で死んで行った母の姿と重なった。
でも、彼女達は美しく、たくましく、力強く、ゆったりとした時間が流れていた。
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